「終の住まい」を考えることは、穏やかな最期への備えです
介護が続く中で、「最期はどこで、どのように過ごすのがよいのか」と考える時期が訪れることがあります。
看取りや終の住まいについて考えることは、縁起でもない話ではありません。むしろ、大切な家族が最期まで穏やかに過ごすための、前向きな備えです。
あらかじめ知り、話し合っておくことで、いざというときに慌てず、後悔の少ない選択ができます。
この記事では、看取りの考え方や、最期を迎える場所の選択肢を、実直にまとめました。
「看取り」とは
「看取り」とは、回復を目的とした治療ではなく、最期のときまで、その人らしく穏やかに過ごせるように支えるケアのことです。
痛みや苦しみをやわらげ、心身の負担を軽くしながら、本人の意思や生活を尊重して寄り添います。
無理な延命を行うのではなく、残された時間の質を大切にするという考え方が基本にあります。
最期が近づくと、体はどう変化するか
最期が近づくと、体には自然な変化が現れることがあります。あらかじめ知っておくと、いざというときに落ち着いて受け止めやすくなります。
一般に、食事や水分をとる量が少しずつ減り、眠っている時間が長くなっていくと言われています。呼吸のリズムが変わることもあります。
これらは、多くの場合、自然な過程の一部です。気がかりなことがあれば、我慢せず、医師や看護師、施設のスタッフに尋ねてください。苦痛をやわらげる対応をとってもらえます。
最期を迎える場所は、選べる時代になっています
かつては、多くの人が病院で最期を迎えていました。今も病院で亡くなる方が多いのは確かです。
一方で近年は、老人ホームなどの施設や、住み慣れた自宅で最期を迎える人の割合が、少しずつ増える傾向にあります(厚生労働省「人口動態統計」)。
医療や介護の連携が進み、病院以外の場所でも穏やかに最期を過ごせる環境が、少しずつ整ってきたことが背景にあります。
どこで過ごすのがよいかに、唯一の正解はありません。本人の希望や体の状態、家族の状況に合わせて選べる時代になっています。
終の住まいになりうる施設
最期まで過ごせる場所として、次のような施設があります。それぞれ、受けられるケアや費用が異なります。
- 特別養護老人ホーム:費用の負担が比較的軽く、看取りに対応する施設が増えています。
- 介護付き有料老人ホーム:手厚いケアを受けやすい一方、費用は高めになる傾向があります。
- 介護医療院:医療的なケアが必要な方が、長期に療養しながら暮らせる施設です。
- グループホーム:認知症の方が、少人数で家庭的に暮らす住まいです。
看取りに対応しているかどうかは、同じ種類の施設でも異なります。個々の施設に確認することが大切です。
施設での看取り
特別養護老人ホームをはじめ、看取りに対応する施設が増えています。
こうした施設では、医師や看護師、介護スタッフが連携し、体調の変化に応じたケアを行いながら、最期まで過ごせるように支えます。
住み慣れた居室で、なじみのスタッフに見守られながら過ごせることは、本人にとっても家族にとっても、安心につながります。
ただし、看取りへの対応の範囲や方針は施設によって異なります。医療的なケアがどこまで可能かを含め、事前に確認しておくことが大切です。
看取りに力を入れている施設では、あらかじめ本人・家族と方針を確認し、その希望に沿ってケアを行います。どのように過ごしたいかを、早めに伝えておくとよいでしょう。
在宅での看取り
住み慣れた自宅で最期を迎えることを希望する方もいます。
在宅での看取りは、訪問診療の医師や訪問看護、訪問介護などが連携して支えます。体制を整えることで、自宅でも穏やかに過ごせる場合があります。
一方で、家族の負担が大きくなりやすい面もあります。無理を抱え込まないよう、レスパイト(休息)の仕組みや、周囲の支えを組み合わせることが大切です。
在宅での看取りを考える場合は、まず担当のケアマネジャーや、かかりつけの医師に相談してみてください。
また、容体が急に変わったときの連絡先も、あらかじめ決めておくと安心です。訪問診療の医師や訪問看護と、緊急時の対応を確認しておきましょう。
緩和ケアという選択肢
がんなどで痛みや苦しみが強い場合には、「緩和ケア」という選択肢もあります。
緩和ケアは、病気そのものの治療とは別に、痛みやつらさをやわらげることを目的としたケアです。緩和ケア病棟(ホスピス)のほか、自宅や施設で受けられる場合もあります。
どのような形が合うかは、かかりつけの医師や、病院の相談窓口に尋ねてみるとよいでしょう。
緩和ケアは、余命が限られた段階だけのものではなく、つらさがあるときに早くから受けられるものです。「まだ早い」と思わず、必要を感じたら相談してよいものです。
元気なうちに話し合う「人生会議」
最期の過ごし方について、本人の意思をあらかじめ共有しておくことは、とても大切です。
近年は、本人・家族・医療や介護の担当者が、望む医療やケアについて話し合っておく取り組みが広がっています。これは「人生会議(ACP)」と呼ばれます。
「どこで過ごしたいか」「どんな医療を望むか」を元気なうちに言葉にしておくことで、いざというときに、本人の希望に沿った選択がしやすくなります。
一度で決めきる必要はありません。気持ちは変わってよいものなので、折にふれて話し合いを重ねることが大切です。
家族にできること
看取りの時期に、家族が特別なことをしなければならないわけではありません。
そばにいて、手を握る、これまでの思い出を語りかける。そうした何気ない関わりが、本人にとって何よりの支えになります。
同時に、家族自身が休息をとることも大切です。無理を重ねると、心にも体にも負担がかかります。専門職やほかの家族の力を借りながら、支え合ってください。
看取りに対応する施設を選ぶときに確認したいこと
終の住まいとして施設を考える場合は、次のような点を確認しておくと安心です。
- 看取りに対応しているか、その方針や実績
- 夜間や急変時の、医療との連携体制
- 家族がどこまで付き添えるか、面会の柔軟さ
- 本人の意思や希望を、どのように尊重してくれるか
こうした点は、パンフレットだけではわかりにくいものです。可能であれば見学し、スタッフに直接尋ねてみることをおすすめします。
費用の考え方
施設で看取りのケアを受ける場合、その内容に応じて費用がかかることがあります。
費用の仕組みは施設や状況によって異なるため、どのような費用が発生するのかを、事前に施設へ確認しておくと安心です。
費用に不安がある場合は、介護保険の軽減の仕組みが使えることもあります。担当のケアマネジャーや市区町村の窓口に相談してみてください。
また、看取りに関わる医療については、健康保険の対象になるものもあります。介護保険と医療保険のどちらが関わるのかを含め、窓口で整理してもらうと安心です。
よくある例
ここでは、多くのご家庭に共通してみられる典型的な状況を、一般的な例としてご紹介します。
一つは、元気なうちに本人と「最期は住み慣れた場所で穏やかに過ごしたい」と話し合っていたことで、いざというときに家族が迷わず選択できた、というケースです。
もう一つは、看取りに対応した施設を選んでいたことで、体調が変わっても慌てて病院を探すことなく、なじんだ環境で最期まで過ごせた、という例です。
事前の話し合いと、対応できる環境の準備が、穏やかな最期につながっています。
また、在宅での看取りを選び、訪問診療と訪問看護の支えを受けながら、家族が交代で付き添って見送った、という例もあります。周囲の支援を組み合わせることで、負担を分け合えます。
看取りのあとに
大切な人を見送ったあとは、深い喪失感に包まれることがあります。悲しみの感じ方は人それぞれで、正解はありません。
つらさが長く続くときは、一人で抱え込まず、周囲の人や、専門の相談窓口に気持ちを話してみてください。
また、亡くなったあとには、さまざまな手続きも必要になります。落ち着かないときは無理をせず、周囲の助けを借りながら、一つずつ進めていきましょう。
一人で抱えず、相談しながら
看取りや終の住まいを考える時間は、家族にとって心の負担が大きいものです。
迷いや不安は、一人で抱え込まず、担当のケアマネジャーや地域包括支援センター、医療機関の相談窓口(医療ソーシャルワーカー)に相談してみてください。
専門職に支えられながら考えることで、本人にとっても家族にとっても、納得のいく選択に近づけます。
看取りを考えることは、残された時間を大切に過ごすための準備でもあります。どうか、抱えている思いを一人で背負い込まないでください。
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本記事は看取りや終の住まいに関する一般的な情報をまとめたものであり、個別の状況や医療についての助言を行うものではありません。対応できるケアの内容や費用、制度は、施設や医療機関、時期によって異なります。実際の検討にあたっては、かかりつけの医師や、担当のケアマネジャー、地域包括支援センター、医療機関の相談窓口など、専門の相談先にご相談ください。


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