老人ホームに入ろうとすると、多くの施設で「身元保証人」を求められます。ところが、配偶者に先立たれた、子どもがいない、親族と疎遠——といった事情で、保証人を頼める相手がいない方は少なくありません。
「保証人がいないと、そもそも入れないのでは」と不安に感じるかもしれません。けれど、保証人を立てられなくても入居する方法はあります。
ここでは、身元保証人がなぜ求められるのか、いない場合にどんな手立てがあるのか、どう動けば道が開けるのかを、順番に整理していきます。
まず、なぜ「身元保証人」が求められるのか
ある調査では、約9割の老人ホームが入居時に保証人(身元保証人や身元引受人)を必要としているとされています。多くの施設が保証人を求めるのには、主に次のような理由があります。
- 入居費用が支払われないときの、支払いの保証
- 緊急時や体調急変のときに、連絡が取れて判断を仰げる相手の確保
- 退去時や亡くなったときの、身柄や荷物の引き取り
これらは、本来なら家族が担うと想定されている役割です。だからこそ、家族に頼めない場合に「どうすればよいのか」が問題になります。
裏を返せば、この3つの役割を別の形で用意できれば、保証人がいなくても受け入れられる可能性がある、ということです。
保証人がいない場合の、主な4つの手立て
身元保証人を立てられないときに使える方法は、大きく次の4つです。本人の状況に応じて、単独で、あるいは組み合わせて利用します。
1. 身元保証会社を利用する
民間の事業者が、有償で身元保証人の役割を引き受けるサービスです。施設が提携先を持っていることも多く、その場合は紹介してもらえます。
費用は会社によって幅がありますが、契約時にまとまった費用がかかることが一般的です。契約する際は、万一に備えて預けるお金(預託金)が、信託などで安全に管理されているかを必ず確認してください。ここは会社選びの重要なポイントです。
2. 成年後見制度を利用する
認知症などで判断能力が十分でない場合に、家庭裁判所が選んだ後見人が、契約や財産の管理を本人に代わって行う制度です。後見人が費用の支払いを管理してくれる点が、施設にとっての安心につながります。
ただし注意したいのは、成年後見人は、身元保証人の代わりにそのままなれるわけではないことです。後見人の役割は財産管理と生活の手続きが中心で、支払いの保証や緊急時の身柄引き取りまでは、通常は担いません。そのため、後見人がいても別に保証人を求める施設もあれば、後見人がいれば受け入れる施設もあり、対応は分かれます。
3. 一定の預貯金があることを示す
施設によっては、一定以上の預貯金があれば、保証人なしでの入居を認める場合があります。支払いの確実さが示せれば、保証の役割の一部を代えられる、という考え方です。基準は施設ごとに異なるため、個別の確認が必要です。
4. 公的な窓口・制度に相談する
市区町村の高齢者福祉の窓口や地域包括支援センターに相談すると、状況に応じて使える公的支援や、地域の団体を紹介してもらえることがあります。経済的な事情がある場合は、社会福祉協議会が行っている支援事業などが選択肢になることもあります。
断られても、そこで話を終えない
保証人がいないことを理由に「難しい」と言われても、それで施設探しが終わるわけではありません。現場の感覚として、「いないから即お断り」という施設はそれほど多くなく、代わりの手立てを示せるかどうかで返事が変わることがよくあります。
「難しい」と言われたときに、次の3つを尋ねてみてください。同じ施設でも、条件を整えれば受け入れられる、という返事に変わることがあります。
- 身元保証会社の利用は可能か
- 成年後見人が付いた場合はどうか
- 緊急時の連絡役と、支払いの保証を、分けて考えてもらえないか
保証人という一つの条件で全体を諦めるのではなく、役割ごとに分けて代替案を探すのが、道を残すコツです。
保証人なしでも入りやすい施設の傾向
「保証人不要」とうたう施設も、少しずつ増えています。ただし、その多くは保証人がまったく要らないというより、施設が提携する身元保証会社の利用が前提になっていたり、後見制度の利用を求められたりするケースです。純粋に何の備えも要らない施設は、実際にはほとんどありません。
とはいえ、身寄りのない高齢の方が増えていることを背景に、こうした代替の仕組みを整えている施設は着実に増えています。「保証人がいない前提で、どんな受け入れ方ができるか」を用意している施設を探す、という視点で動くと現実的です。
一人で抱えず、相談しながら進める
保証人がいない場合の施設探しは、制度や手続きが複雑に絡むため、家族や本人だけで進めるのが難しい典型的なケースです。どの手立てが本人の状況に合うのか、どの施設がその手立てを受け入れるのか、外からは分かりにくいためです。
老人ホーム紹介サービスの相談員に相談すれば、保証人がいない前提で受け入れ可能な施設を絞って提案してもらえたり、施設への確認を代わりに進めてもらえたりすることがあります。成年後見制度については、地域包括支援センターや自治体の窓口でも相談できます。
保証人を頼める相手がいないことは、決して珍しいことでも、恥ずかしいことでもありません。同じ悩みを持つ方は年々増えており、それに応える仕組みも整ってきています。一人で抱え込まず、使える窓口を頼りながら進めてください。
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本記事は一般的な情報をまとめたものです。身元保証人や身元引受人に求められる役割、成年後見制度や身元保証会社の仕組み、施設ごとの受け入れ条件は、施設・地域・時期や本人の状況によって異なり、変わることもあります。最新かつ正確な内容は、各施設や自治体の窓口、地域包括支援センター、専門家にご確認ください。


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