老人ホームを探そうとすると、多くの施設で「要介護◯以上」といった条件が出てきます。この「要介護」を判断するのが、介護保険の要介護認定です。
施設選びの前提になる大切な手続きですが、初めてだと「どこに申し込むの?」「どれくらい時間がかかるの?」と分からないことばかりだと思います。
ここでは、介護認定の受け方を申請から結果が出るまで順番に整理し、要介護度が施設選びにどう関わるのかまで、まとめて見ていきます。
介護認定とは、介護の必要度を判定する仕組み
介護認定(要介護認定)は、その人にどのくらいの介護が必要かを、全国共通のものさしで判定する仕組みです。介護保険のサービスを使うには、この認定を受けることが出発点になります。
判定の結果は、大きく「自立」「要支援1〜2」「要介護1〜5」に分かれます。数字が大きいほど、必要とされる介護の度合いが高いことを意味します。
老人ホームの多くは、この区分を入居の条件にしています。だからこそ、施設を本格的に探す前に認定を受けておくと、話がスムーズに進みます。
介護認定を受けると、何が変わるのか
手続きの前に、認定を受けるとどんな良いことがあるのかを知っておくと、動き出しやすくなります。
最も大きいのは、介護保険のサービスを1〜3割の自己負担で使えるようになることです。訪問介護やデイサービス、福祉用具のレンタル、住宅改修の補助など、費用の大部分を保険がまかなってくれます。認定がなければ、これらは原則として全額自己負担になります。
老人ホームについても同じで、介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホームなど、多くの施設は認定を受けていることが入居の前提になります。認定は、施設という選択肢の扉を開く鍵でもあるわけです。
「まだそこまでではない」と感じても、申請自体は無料で、受けておいて損はありません。いざ必要になったときに慌てないためにも、気になり始めた段階で申請しておくのは、現実的な備えになります。
介護認定を受ける流れ
1. 市区町村の窓口に申請する
まずは、本人が住む市区町村の介護保険の窓口、または地域包括支援センターに申請します。申請そのものに費用はかかりません。
本人が窓口に行けない場合でも、家族が代わりに申請できます。地域包括支援センターやケアマネジャーに代行を頼むこともできるので、遠方に住んでいる、仕事で動けないといった場合は相談してみてください。
2. 訪問調査を受ける
申請すると、市区町村の調査員が自宅や入院先を訪ね、本人の心身の状態を確認します。歩行や着替え、食事、記憶や意思の伝達など、決められた項目に沿って聞き取りと観察が行われます。
このとき、普段の状態をありのままに伝えることが大切です。本人は調査員の前だと張り切って「できる」と答えてしまうことがあるため、日頃の困りごとを家族がメモにまとめて同席し、補足できると実態に近い判定につながります。
3. 主治医意見書が作られる
本人のかかりつけ医が、心身の状態についての意見書を作成します。これは市区町村が医師に依頼するため、家族が特別に動く必要は基本的にありません。
かかりつけ医がいない場合は、窓口で相談すると医療機関を案内してもらえます。
4. 審査・判定を経て結果が届く
訪問調査の結果と主治医意見書をもとに、コンピュータによる一次判定と、専門家による審査会での二次判定が行われます。その結果、要介護度が決まり、認定結果の通知が郵送で届きます。
申請から結果が届くまでは、原則としておおむね30日程度が目安です。ただし混み具合によって前後することがあります。急ぐ事情があるときは、申請時にその旨を伝えておくとよいでしょう。
申請のときに用意するもの
申請の手続きをスムーズに進めるために、あらかじめ用意しておくとよいものがあります。
- 介護保険の被保険者証(65歳以上の方に交付されているもの)
- 健康保険証(40〜64歳の方が申請する場合など)
- 本人のマイナンバーが分かるもの
- かかりつけ医の名前と医療機関名(主治医意見書の依頼に使われます)
必要なものは市区町村によって少し異なることがあるため、申請前に窓口や地域包括支援センターに一度確認しておくと確実です。
訪問調査を上手に受けるためのコツ
要介護度は訪問調査の結果に大きく左右されるため、ここは丁寧に臨みたい場面です。実態より軽く判定されてしまうと、必要なサービスや施設が使いにくくなることがあります。
コツは、日頃の困りごとを具体的に伝えることです。「週に何回、夜中にトイレで起きて介助が必要」「服の着替えに毎回付き添っている」など、頻度や場面をメモにまとめておくと、調査員に状況が正確に伝わります。
また、できるだけ家族が同席することをおすすめします。本人が遠慮したり見栄を張ったりして「できる」と答えがちな場面で、家族がそっと実際の様子を補足できると、判定が実態に近づきます。認知症の症状など、本人が自覚しにくいことも、家族だからこそ伝えられます。
要支援と要介護は何が違う?
認定の区分は、大きく「要支援」と「要介護」に分かれます。この2つは、受けられるサービスや入居できる施設が変わる、重要な境目です。
要支援1〜2
日常生活はおおむね自分でできるものの、一部に支援が必要な状態です。介護予防を目的としたサービスが中心になります。入居できる施設は、サービス付き高齢者向け住宅や一部のグループホームなどが中心です。
要介護1〜5
日常生活に継続的な介護が必要な状態です。数字が大きいほど必要度が高く、受けられるサービスの幅も広がります。要介護3以上になると、特別養護老人ホームの主な対象になります。
本人がどの区分に当てはまるかによって、現実的な施設の候補が変わってきます。認定結果は、施設探しの重要な手がかりになります。
要介護度ごとの状態の目安
要支援・要介護の区分は、心身の状態のおおよその目安と結びついています。あくまで一般的なイメージですが、本人がどのあたりに近いかを考える手がかりになります。
要支援1・2
基本的な生活は自分でできるものの、立ち上がりや掃除など一部に見守りや手助けが必要な状態です。介護予防のサービスで、今の状態を保つことを目指します。
要介護1・2
歩行や排せつ、入浴などの一部に、日常的な介助が必要な状態です。認知機能の低下が見られ始めることもあります。
要介護3
立ち上がりや歩行が自力では難しく、日常生活の多くの場面で介助が必要な状態です。特別養護老人ホームの主な対象となる区分でもあります。
要介護4・5
介助なしでの生活が難しく、ほぼ全面的な介護を要する状態です。要介護5では、意思の伝達が難しくなっているケースもあります。
実際の判定は、心身の状態を総合的に見て決まります。ここに書いたのはあくまで目安なので、「うちの親はこのくらいかも」という当たりをつける程度に使ってください。
認定結果に納得できないときは
認定結果が、思っていたより軽い区分だった、という声は少なくありません。本人の状態と結果が合っていないと感じたときは、いくつかの対応があります。
一つは、市区町村に区分変更を申請する方法です。状態が変わったときや、判定に納得できないときに、あらためて認定を受け直せます。
もう一つは、結果に不服がある場合の審査請求という仕組みです。ただ手続きに時間がかかるため、実務的には区分変更申請のほうが選ばれることが多くなっています。判断に迷うときは、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談してみてください。
認定を待つ間に、できる準備
結果が出るまでのおよそ1か月は、待っているだけの時間にする必要はありません。この間に施設探しの準備を進めておくと、認定が出てからの動きが速くなります。
たとえば、本人の希望するエリアや、家族が通いやすい範囲を整理しておく。費用として無理なく続けられる範囲を家族で話し合っておく。気になる施設の情報を集め始めておく。こうした準備は、認定結果を待たずに進められます。
認定が出れば、それに合った施設に一気に絞り込めます。待ち時間を準備期間に変えておくと、いざというときに落ち着いて動けます。
また、認定の効力は申請した日にさかのぼって発生します。そのため、急いで介護サービスを使い始めたい事情があるときは、結果の通知を待たずに、暫定的にサービスを利用できる場合があります。退院が迫っているなど切迫した状況では、ケアマネジャーや地域包括支援センターに早めに相談してみてください。
認定の相談も、施設探しと一緒に進められる
介護認定の手続きと施設探しは、別々のことのようでいて、実は地続きです。認定の申請先である地域包括支援センターは、施設探しの相談にも乗ってくれます。
また、老人ホーム紹介サービスの相談員に本人の状況を伝えれば、想定される要介護度をふまえて、合いそうな施設の候補を一緒に考えてもらえることもあります。認定の結果を待ちながら、並行して施設の下調べを進めておくと、全体の流れがスムーズになります。
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本記事は一般的な情報をまとめたものです。要介護認定の基準や手続き、受けられるサービスの範囲は制度によって定められており、見直されることや、市区町村によって運用が異なることがあります。最新かつ正確な内容は、お住まいの市区町村の窓口や地域包括支援センターでご確認ください。


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